朝から降り続いた生温かい雨が
路上生活者たちの集めた段ボールをじっとりと濡らす
そんなある夜更けのことだった。
『サイレントヒル』のレイトショーを見た帰り
友人とマクドナルドでさんざん映画の悪口を言い合って
罵詈雑言のネタも尽き、Nが店を出ようとした刹那、時が止まった。
目の前を通り過ぎようとしているのは他でもない
件のコンビニ店員××さんであった。
※[
参照1][
参照2]
さっきまでスクリーンに映っていた
血だらけの映像にはぴくりとも反応しなかったNの心臓が
どくん・・・
と大きな音を立ててひとつ鳴った。
××さんの側に、見知らぬ男がいた。
仲良さそうに肩を並べて歩いていく二人の姿を
Nは傘をさすのも忘れて見送った。
××さんは、笑っていた。
そのいささかの曇りもないふっくらとした笑顔が
Nの疲れた網膜に
印画紙のごとく焼き付けられた。
ひとつの時代が終わりを告げた瞬間であった。
そのときNの頬をつたって流れたのは
一筋の涙、いや、やはり雨粒であったのだろう。
Nは星ひとつ見えない夜空を見上げ
「やっぱりコンビニには
幸せは売ってないんだね・・・」
と低い声でぼそりと呟き
雨のしのつく夜の街へと消えていったのだった・・・
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