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漫画家Nのイラストと文章で綴る映画な日々

にしかわたく (漫画家)

マンガ家・イラストレーター。生まれて初めて劇場で見た映画は『グリズリー』と『テンタクルズ』の二本立て。
現実逃避のスピードを極限まで加速すればいつか現実を追い越せると信じ、今日もロスト・ハイウェイをひた走る36歳、デブ専。
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『UFO少年アブドラジャン』(1992・ウズベキスタン)
『UFO少年アブドラジャン』(1992・ウズベキスタン)_e0000251_06437.jpg

ヤバイ…

今年見た映画の中で一番面白いかも。

レンタルしてきたDVD、あまりの楽しさに2回連続で見て
さらに延滞してもう1回見てしまいました。


舞台は中央アジア、ウズベキスタンのド田舎のとある農村。
(この国に都会というものがあるのかどうか怪しいですが…)
時代はまだソ連が元気だった頃。
属国ウズベクも、ボルシェビキな感じの計画農業をしています。
「今日はコルホーズの寄り合いがあるけんね、遅くなるばい」的な。
だけどこの人たち、思いっきりイスラム教徒なんですよね。
「アッサラーム・アレイコム」とか言いつつ体制は社会主義って
どーも違和感があるんですが…。
実際のところ当時の宗教の扱いがどうだったのか、興味あるところです。

さてさてこの村に、モスクワのお偉いさんから
「お前らの村のあたりにUFOが落ちたらしいから
 宇宙人を見つけたら報告するように」
というマヌケなお達しが来ます。
のんきな村民はUFOが何かなんて知らないので
「どーも空からお客さんが来るらしい」くらいのユルい解釈。

そんな中、主人公のおじさん・バザルバイが
行方不明になった馬鹿ロバを探して歩いておりましたところ
野原の真ん中で、裸の金髪少年に出くわします。
彼こそは惑星アルファ・ベータ・ツェントゥリオンからやってきた宇宙人。
バザルバイは頭が悪いのでそんな長い名前は覚えられず
自分のおじいさんの名前を取って、彼に「アブドラジャン」と名づけ
一緒に暮らし始めます。
果たしてこのUFO少年が村に巻き起こす珍騒動とは!?
待て次号!!!!
的な。


まぁこの映画、最初の突っ込みどころは一目瞭然

小学生レベルの手作り特撮。

(太っとい丸見えの糸で吊られた、限りなく鍋チックな)UFOが
(頼りなさげに)画面を横切る!
今散髪したばかりの頭が、あっというまに(編集で)元通り!
お兄さんが瞬間移動(画面に映りこんでるおばちゃん動いちゃだめだってば)
人間の10倍もある巨大なスイカ(の絵)

不思議なのは、こんなにひどい特撮なのに
「おおっ!?」って反応しちゃうんですよ、なぜか。
私が思うに、これは

作り手の驚きが観客に伝染している

んじゃないかと。
ハリウッド映画の完璧なCGにすっかり慣らされた我々は
トランスフォーマーやマッハGOGOGOくらいじゃ全然驚けません。
それはなぜなのか、ってことを突き詰めて考えてみますと

まずもって作り手自体が驚いてない

ってとこに原因があるのじゃないか。
エド・ウッドの映画もそうなんですが
この『UFO少年アブドラジャン』の場合は、作り手が

これスゲェ!超スゲェ!!!

って目をキラキラさせがら作ってる様が想像できるんですよね。
興奮が画面を通して伝わってくる。
センス・オブ・ワンダーの源は、CG技術の進歩じゃなくて
そういう、作り手と受け手の間の微妙な距離感にあるんじゃないかと
思ってみたりする39歳の今日この頃なのです。


この映画、同じ共産圏SFということもありまして
あの『不思議惑星キンザザ』と並べて語られることが多いようです。
確かにすっとぼけた感じとか、妙なテンポ感とか似てる部分も多いんですが
果たしてこの映画を「素朴」とか「味がある」という評価で
済ましてしまっていいものか、私は少々疑問なんです。

実はこの映画、冒頭に次のようなナレーションが入ります。

拝啓、スティーブン・スピルバーグ様。
この間、我がコルホーズのビデオ鑑賞会で
あなたの作品『E.T.』を見ました。
とても素晴らしい作品でした。
実は私どもの村にも、先日UFOがやってきたのです。
あなたの映画の中のUFOはキラキラ光っていて綺麗でしたが
こちらのは、思いっきり鍋みたいでした。


つまり、この後の物語は
スピルバーグへの手紙を読み上げるという形で語られていくのです。
私の文章で伝わるかどうか心もとないのですが
最初にこのナレーションを聞いた時点で私は

うまいっ!

と唸ってしまいました。
中央アジアのド田舎と
アメリカのポップカルチャーの不思議な組み合わせが猛烈に面白いですし
「ああ、この村には映画館がないからビデオなんだなー」
とほのぼのとした気持ちにも。
多少とも映画好きなら
このオープニングで完全に心をつかまれてしまうのではないでしょうか。
さらに映画の中盤でも
ストーリーの文脈とはまったく関係なくこんなナレーションが入ります。

昨日、タルコフスキーさんの『ストーカー』という映画を見ました。
ストーリーはさっぱりでしたが、気に入りました。


ストーリーはさっぱりでしたが気に入りました!

あの映画に対するこれ以上の批評は
世界中の映画雑誌探しても書かれていないと思います。
しかも画面は、ちゃんと川の流れに揺れる水草を写しているし!
(『惑星ソラリス』の超有名シーン。わかんない人すいません)


これはもう確信犯でしょ!



素朴の皮をかぶった超傑作『UFO少年アブドラジャン』
見てない人は損してまっせ!






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私が今いる場所は東村山駅前のシャノアール。
店長が超ド級のメガネ美人だ。ゴキブリにおびえる姿に惚れた!
↓とゆー訳で、老いらくの恋に後押し下さい・・・


『UFO少年アブドラジャン』(1992・ウズベキスタン)_e0000251_043446.gif
by taku-nishikawa | 2008-08-07 23:59 | 和み地獄 | Comments(2)
Commented by at 2008-08-08 20:29 x
うほっ!! アブドラジャンだ。これにしてもキンザザにしても嗚呼異世界の人というワンダーがありますね。ハリウッド映画、日本映画とも明らかに違うモノ。偶に観るとその違いが気持いい!!西側(ハリウッド)に毒されて欲しくないモノです。大丈夫だと思うけど。

あとスペイン映画もなんか好きです。なんか空気感が違っていて。そんなに多く観ていないけど。ミラクル・ぺティント、ユートピアとかが好きです。アタメも良かった。
Commented by taku-nishikawa at 2008-08-11 00:06
隼さま
>西側(ハリウッド)に毒されて欲しくないモノです
これ、私もこの映画見ながらずっと考えてました。
少なくともロシアの映画業界は
凄い勢いでハリウッドナイズされてきてますよね。
ベクマンベトフなんかも手法は完全にハリウッドスタイルですし
(でもこの人、中身が微妙にずれているところが面白いんですが)
『キンザザ』みたいに文法から何からすべてが新鮮、という映画は
だんだん作られなくなっていってしまうのではないかと危惧しています。
まぁ、日本で公開されるのはごく一部なので実情はわかりませんけど。

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