こちらもそろそろ終わっちゃいますけど
この『歩いても歩いても』
ある種の人は絶対に見逃してはいけない1本になっております。
どういうタイプの人が必見かと言いますと…
ずばり
向田邦子フリーク。
監督は是枝裕和。
私は『誰も知らない』でこの人にぞっこんになり
次にどんなものを撮るのか注目していたのですが
こう来ましたか…
日本のお家芸・正統派ホームドラマ。
監督は62年生まれで、私より7つ上。
向田邦子の短いキャリア(しかし中身は異常に濃密)を
丸ごと享受して育った世代です。
向田ドラマを見たことのある人なら嫌でも気づくのですが
この映画、とにかくありとあらゆるところに
向田パーツが満載。
家族の優しさ、有難さ、面倒臭さ、そして残酷さ。
料理にこだわるところも向田邦子の特徴ですし
通奏低音みたいに物語の底の方をずっと流れている
「女の怖さ」というテーマも共通です。
何よりこの映画には
向田ドラマの代名詞ともいえる女優、加藤治子が出演している。
(脇で使うところがまた憎い)
是枝監督は彼女をキャスティングすることで
「向田邦子と比べてください」
とはっきり宣言している訳です。
“オマージュ”とか“リスペクト”とか“パロディ”とか
“ポストモダン”とか“ポップアート”とか“脱構築”とか
この世にはパクリを言い換えする便利な言葉がたくさんありますが
偉大な先人の作品に
あえて正面から勝負を挑む
という是枝監督の根性は
なかなか見上げたもんだと私は思います。
とゆー訳で、向田ドラマ好きでこの映画をまだ見てない人は
あれこれ言わずに劇場へ急いで下さい。
とりあえず、私はめっちゃ泣きました。
ここで終わればすっきりして良いとわかっちゃいるのですが
私の文章から余談を取ったら何も残らないとゆーことで
今日も蛇足情報をひとつ。
今本屋さんに並んでいる
『別冊暮らしの手帖・昭和の味』
というムックの中に
「寺内貫太郎の食卓」
という記事があって、これが凄く面白い。
ドラマの中で寺内家が食べていた朝食のメニューが載っているのですが
昔のお母さんは、朝からこんなにちゃんと料理をしていたんですねぇ…。
素朴なんだけど、めっちゃ食べてみたくなるんすよ。
昨晩の残りの精進揚げの甘辛煮
とかね。
『向田邦子の手紙』の中に
向田が当時、殺人的なスケジュールを縫って
たびたび料理を作っては
恋人に持って行っていたというエピソードが書かれています。
料理も、恋人のことも、ほんとに好きだったんだなぁ…
と、読み返すたびにキュンと来てしまいます。
爆笑太田も言っていましたが、本当にこの人は可愛らしい。
この本の著者でもある向田邦子の妹さんが
赤坂でやっていた小料理屋「ままや」
何年か前に閉店してしまったらしいのですが
行っとけばこーゆーの食べれたんだろうなぁ…うくく。
後悔先に立たずとはこのことであります!
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