実はここ3日ほど煙草を止めてまして
ニコチンの禁断症状でのたうちまわっております。
この地獄の苦しみを映画でまぎらわそうと思い
部屋にあるビデオを片っ端から物色
押入れの奥から発掘したのが
この
『グレイフォックス』でした。
西部開拓時代、駅馬車強盗で名を馳せたビル・マイナー。
無駄な殺生はしない彼の流儀は“貴族強盗”と呼ばれ
「ホールド・アップ」という強盗の決まり文句は
彼が最初に使ったとも言われている。
長い獄中生活を終えたビルはすでに老人。
外の世界は彼の知っていた19世紀から、20世紀の新時代へと移行していた。
妹夫婦のもとに身を寄せ堅気の仕事に就こうとするが、性に合わず
たまたま映画館で見た『大列車強盗』(世界最初の西部劇と言われている)に興奮し
列車強盗を始め、流浪の生活に戻ってしまう。
逃亡の果てに、カナダの田舎町に身を隠すビル。
そこで知り合った女流写真家ケイトに恋をし
つかのまの幸福を味わうビルだったが
追っ手はすぐそこまで迫っていたのだった…。
『グレイフォックス』は
『ケーブルホーグのバラード』や『許されざるもの』と同じように
西部劇の終焉を描いた西部劇。
主演は
リチャード・ファーンズワース。
リンチの『ストレイト・ストーリー』でトラクターを運転してた
あのお爺ちゃんです。
気の毒な話ですが、この爺さん
『ストレイト~』が完成した翌年
癌を苦に拳銃自殺してしまいました。
もし『ストレイト~』を見なかったら
私はこの俳優を一生知らずに終わっていたと思うので
その点、リンチにはありがとうと言いたい。
劇中、ケイトがビルに向かって
「あなたの顔には炎が宿っている」
と言うシーンがあります。
文字で読むと、くっさい台詞だなと思うでしょうが
リチャード・ファンズワースの何とも言えない顔を見てると
つい納得してしまうから不思議。
『ストレイト・ストーリー』に
この爺さんが若き日の戦争体験を語る、なかなか痛切なシーンがありました。
私があのくだりを見て思ったのは
人は年を取ると丸くなるように見えるけれども
角が取れるのは外側だけの話で
一度芯まで刺さった棘は、決して抜けないものなんだな
ということでした。
時間の経過とともに
傷との付き合い方は覚えていくけれども
傷自体がなくなることは決してない。
自分の貧しいボキャブラリを使い
こうして脳内で理屈をこねておりますと
いつもいかんともしがたい
自己啓発セミナーの香り
が漂ってきちゃうんですけど
ファーンズワース爺さんはこういうのを全部
目で
語っちゃいます。
史上、このクラスまで達したのは
ゴールドセイントと高倉健しかおりません。
爺さんの目力(めぢから)が『グレイフォックス』の中で語るのは
時代に合わせて生きることができない、荒ぶる魂
年を取っても消すことのできない、体の奥の炎。
・・・つくづく
凄い俳優ってのは。
いるもんだなぁ、と。
この映画、ラストが赤面するほどロマンチックで
もし隣に監督がいたら
思わず抱きついて、キスしちゃいそう(おいおい・・・)。
ほんとうに魔法のような2時間。
煙草のことなんか、1度も思い出しませんでした…
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